「辞めたいな…」と思っていたのに、上司に「いま人手が足りないから、もう少しだけいてくれないか」と言われて、なんとなく「はい…」と引き下がってしまった。
そんな苦悩の中にいますよね。
本当は限界がきているのに、「きみが抜けたらまわらなくなる」と言われると、急に自分の意思を通せなくなる。
なぜ、人手不足の引き止めに心が揺らいでしまうのでしょうか?
この記事では、辞めたくても辞められなくなる心理的な原因をいくつか丁寧に掘り下げながら、どうすれば「自分のための決断」ができるようになるのかをお伝えしていきます。
必要とされている心地よさが手放せなくなる
人から「あなたがいないと困る」と言われること。
それは、仕事に限らず、人間関係の中で最も強力な“報酬”のひとつです。必要とされることで私たちは誇らしくなれます。
- 役に立っている
- 求められている
- 自分には価値がある
でもこの「必要とされている心地よさ」は、無意識のうちに依存してしまうこともあります。
今の職場で、自分の存在価値を感じている。もし辞めたら、もう誰にも必要とされなくなるかもしれない…そんな不安が、辞める足をとめてしまっているのかもしれません。
迷惑をかける罪悪感が本音を押し込めてしまう
辞めると決めたときに、「今辞められたら困るよ」「どうしてこのタイミングで…?」と、困った顔をされた。
その瞬間、多くの人がこう思います。
「申し訳ないな…」
「迷惑をかけるのは、やっぱりダメだよね…」
でも、人手が足りないのは、会社の体制や人材マネジメントの課題。一人に負担が集中している職場なら、本来は組織が見直すべき問題です。
「辞めたい」と思うほどの状況に耐えているのに、罪悪感まで背負う必要はありません。
「やめた後がこわい」という未来への不安
辞めようと考えているとき、頭のどこかにこんな疑問が浮かびます。
「このあと、ちゃんと次の仕事が見つかるだろうか…」
「自分はもうどこにも必要とされないんじゃ…」
不安が強すぎると、引き止められることを言い訳にして行動できなくなります。
「人手不足だから仕方なく残っている」という建前の裏に、「本当は、自信がなくて一歩を踏み出せない」という本音が隠れているのかも。
不安を感じている自分を責める必要はありませんが、その不安に支配されすぎて「今の苦しい現状」を続けるのはもったいないことです。
「辞めたい」と言い出した自分を裏切りたくない
一度引き止められて「はい」と言ってしまった手前、また「辞めます」と言い出すのがこわくなってしまう…
こうした気持ちは、完璧主義や責任感が強い人ほど感じやすいものです。また、過去の自分が出した決断を大事にしたいという気持ちは、とても誠実な心の現れでもあります。
でも、言い出しづらいのは、人に気をつかいすぎているだけです。大切なのは、今のあなたがどう感じているかです。
「状況が変わった」「心境が変わった」、それを伝えるのは裏切りではなく、正直さと勇気の表れです。
周りに迷惑をかけない生き方ばかり選んできたクセ
20代の社会人に多い傾向として、「ちゃんとしなきゃ」「期待に応えなきゃ」という思考パターンがあります。
学生時代から、「先生や親の期待に応える」ことを繰り返してきた結果、自分の意志より、周りの反応を優先することに慣れてしまっているのです。だから、上司に「残ってほしい」と言われると、自然と「そうすべきかもしれない」と考えてしまいます。
けれど、自分の幸せに必要なのは、空気を読むより自分に正直でいることです。引き止められても、やっぱり辞めたいと思うなら、その気持ちを大切にしていいのです。
どうすれば揺らがずに辞められるのか?
では、こうした心理的な揺れを感じながらも、どうやって「自分の決断」を守っていけばよいのでしょうか?
自分が辞めたい本当の理由を言語化する
「なんとなくつらい」ではなく、紙に書き出してみましょう。
- 何がつらいのか
- どう変わりたいのか
- どんな未来を描いているのか
これが明確になっていれば、引き止めの言葉に左右されにくくなります。
「今」ではなく「未来」の自分に意識を向ける
いま困っている人の顔を思い浮かべると、どうしても動けなくなります。でも「3年後、5年後の自分が笑っていられるか?」そう問い直すことで、視野が広がります。
「辞める=冷たい」ではないと理解する
辞めることは、人に迷惑をかけることではなく、自分の人生を自分で選ぶという行為です。誰かを犠牲にしているわけではありません。
不安は「準備」と「行動」でしか解消できない
転職サイトに登録する、求人を見てみる、面談を受けてみる。
行動を始めれば、「自分にできること」が見えてきます。頭の中で不安を膨らませているより、動いてみた方がずっと気持ちがラクになります。
心が揺らぐのは、あなたがやさしくて、真剣に生きているから
辞めたいと思っても、引き止められて、また迷ってしまう。そのたびに自分を責めたり、「私は決断力がない」と落ち込んでしまうこともありますよね。
でも、心が揺らぐのは、あなたがまじめで、やさしくて、周りのことを考えられる人間だからです。それは、決して弱さではなく、あなたの大切な魅力です。
ただ、同時に忘れないでほしいのは、人生は、誰のものでもなく自分のものだということ。
必要とされることも大事だけれど、「自分を大切にすること」はもっと大事です。
もし今、辞めたい気持ちがあるなら、まわりからの期待より自分の声を優先しましょう。